株式会社エコアニマルヘルスジャパンの最新情報

12月のご挨拶

師走の候、ますます御健勝のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。
 関東では、急に寒い日が訪れ、風邪ひきさんをよく見かけるようになりました。皆様いかがお過ごしですか?日本海側は雨または雪が多いようですが、暖冬傾向という予報のようですね。
 PEDの今後の見込みについて、『くすぶり続けていく』といった感じでしょうか。「防疫マニュアル」が農林水産省から発表されましたが、何をすれば良いのか?終息できるのか?『先が見えない』といった声を聴くようになりました。それだけ「指針」というものに対しての期待が大きかったからでしょうか。このPEDには、まだ未解明な部分があり、抜本的な対処策がないという認識が広まったからだと思います。
 今後は、信頼できる開業獣医師とともにズルをせず堅実な地域防疫の意識を持ち続け、洗浄消毒を徹底したバイオセキュリティと母豚免疫をしっかりつけていくことが、PED発生を終息させ、生産性を高めていくことにつながると確信しています。1日も早いPED終息を願っております。
 時節柄、ご自愛下さい。



 2014年12月
 先日、バリューファームコンサルタントとサミットベテリナリーサービスのジョイントセミナーの講演を聞いて参りました。気付いた点について触れて行きます。

 会場の養豚生産者から「この飛び火した流行の原因が何なのか?」という質問が出たことに、ちょっと驚きました。皆様が既に共通理解の上で人工乳等の内容切り替えがあったと受け止めていたからです。公の発表で原因を特定されることは、責任の所在や訴訟問題等から基本的にまず「出来ない」という認識を持っております。一方で、血しょうたんぱくからPEDウイルス断片がPCRで拾えたこと自体で、感染源のウイルスの存在は証明された訳です。それを「感染性は否定された」という発表となり、「疑わしいかもしれないが、感染性という黒ではない」という結論に納まった発表だったと受け止めております。カナダの最初の発表は『諸般の事情』を考えず、後から「感染の可能性を否定した」ものとなりました。また、米国や日本でのPED発生時の過去の古いロット中の血しょうたんぱくサンプルの方が、血しょうたんぱくが疑われ始めた最近のロットより、定量的なPCR測定でウイルス量が多い事実が存在します。万一、血しょうたんぱくが、説明されているような条件下ではなかった場合、例えば他の有機物と結合して存在し、ウイルス単独とは異なる条件の場合、かつ処理温度と時間が守られていなかった場合には、血しょうたんぱくが原因になり得る可能性は否定できないと考えます。
 IPVS2015のメキシコ会場で会った米国獣医師に「PEDの原因は何なのだ?」と聞いた時、「わかっているだろう」と笑われました。あの徹底的な調査大好き米国でさえ、触れてはいけない案件という位置付けで各方面の了解が済んだ問題のようです。
 過去の初発原因はさておき、現在の問題は、発症動物からの拡がりです。ですから、これ以上拡げない取り組みが大切になります。

豚流行性下痢(PED)の疫学調査に係る中間取りまとめ(平成261024)

中間取りまとめの概要(PDF73KBhttp://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/ped/pdf/ped_ekigaku_gaiyou.pdf

中間取りまとめ本体(PDF1,576KBhttp://www.maff.go.jp/j/syouan/douei/ped/pdf/ped_ekigaku_chukan.pdf


 動衛研の宮崎先生のお話では、その精力的なご研究の取り組みから、以下の貴重な情報をたくさん提供して頂きました。
 『母豚の免疫をしっかり賦与する』ために、母豚側の①泌乳量を確保し、一方②子豚の吸飲量の確保が重要で、『環境中のウイルス量を減らす』目的の豚を入れる前の水洗&消毒と、『新たなウイルスを入れない』バイオセキュリティの徹底が指摘されました。
 感染実験の途中結果より、ウイルス排泄は少なくとも10週後までは確認されていることから、ある程度の期間は発症が収まっても、十分に注意する必要があることが解りました。
 PEDウイルスの遺伝子型について、日本で流行している『北米型』が、最近米国分離株の約20%を占めるようになった「第二の流行と呼ばれる『インデンス型』」と、血清型では交差するものの、完全にホモなのかヘテロなのかは、まだ不明だそうですが、哺乳豚の死亡率が少ないことより、ワクチンの製造株にできないかと言われているようです。
 また、下痢=PEDだけと思いがちですが、ロタウイルス感染症が含まれている指摘がありました。しかし、その防御対策は基本的にPEDと同じなので、トータルとしての予防をしていくことが肝要だと思います。

 呉先生のご講演からは「今までに分かっているPEDの重要な特徴」の確認作業ができ、今後何をなすべきかが解かり易く示していただけました。
 特に先生のご指摘された「PEDのユニークなバランス」として、PEDの発生する場合と発生しない場合を天秤で示され、発生するには『PEDウイルス負荷』がかかるためであるが、一方でそれを予防する『免疫・衛生・環境・健康』の対策を取れると発生しない図式が印象的でした。
 先生の計画的自然感染(PNE: Planned Natural Exposure)だけでなく、ワクチンを組み合わせた場合の抗体価の上昇はとても興味ある点であり、また、PED症状の下痢・嘔吐・食欲不振をもってして、PNEの免疫応答を確認することが重要である点も参考になりました。もちろん徹底的な衛生対策により、被害と伝播を最小限にする前提条件が必要な点も重要だと理解できました。
 加えて、生産システムの改善(例:ウィークリーからフォーファイブに)検討も、PED感染源をコントロールしやすくなる、大きな手段だと感じました。欧米で使用されているMSD社のRegumateというホルモン剤があれば、投薬をやめれば発情がきて、豚群の発情を揃える道具になり得ます。開発経費の問題がメーカー側にあるのでしょうが、このような有益な薬は生産者団体の支援も受け、より早い承認が取れるようにして頂き、日本養豚が国際競争力を持てる方向に取り組めるものと信じます。

http://www.thepigsite.com/focus/msd-animal-health/3617/msd-animal-health-regumate

 石川先生の現場からのご報告からは、PEDに関する知見と対策が示されました。特に馴致をしないワクチンと消毒だけの対応をした農場の1腹当たりの離乳頭数の推移が、馴致例では1か月後から回復傾向になるものの、3か月後まで引きずる形で8頭以下であった実例を見ると、投与方法と農場を良く知る獣医師の指導に基づいた馴致の有効性を再認識しました。様子を1か月見たり、1日しかかけなかったりした場合に慢性化して半年以上も影響が残った例がありました。発生した後の鎮静化には、ぶり返しが少ない発症子豚の淘汰も重要な戦術であると感じました。
 また、スリーセブン生産方式の(分娩舎のAIAOができる)場合で、やはりぶり返しが少ないことから、これも重要な策の一つだと思います。
 さらに、PEDの伝播経路を①点の発生と②面での広がりを区別して考えるべきという指摘も納得させられました。
 徹底した消毒と簡単に言われますが、溜め込みスラリーからのPEDウイルスの詳細な分離データには驚きました。簡単にはPEDウイルスが無くならないことを示し、床上だけでなく、床下(汚水を抜いての洗浄消毒)に加え、粉末炭カルによるアルカリ化までしてようやく検出限界以下になるという点を明らかにされ、簡単な消毒ではPEDウイルスは存在することが明らかになりました。検査の重要性を改めて感じました。

 今回聴取して感じたのは、現場の先生方がそのご経験からPED対策をしっかりお持ちである点です。冒頭述べた『くすぶり続けていく』、『先が見えない』という発言は撤回させて下さい。米国より早く日本では終息できるのではないかという期待が持てました。注意しなければいけない点があります。カンや経験則だけに頼っているのではなく、先生方は検査によって、農場の状況を科学的にしっかり把握している点です。

 最後に動衛研の先生から「馴致を安易に容認する訳にはいかない」という発言も、研究者の立場から学問的に裏付けられたもの、科学的に証明されたものでないといけないという理由も良く理解できました。休日返上で試験を進められ、有益な情報を獣医師・生産者にフィードバックしようと懸命に取り組んで頂いていることに感動すら覚えました。このような研究者からの発表、獣医師の実際の経験、現場の農場等々が結集してPEDに取り組んでいくことが一番大切だと最後に会場からの意見として出ました。
 今後は、信頼できる開業獣医師とともにズルをせず堅実な地域防疫の意識を持ち続け、洗浄消毒を徹底したバイオセキュリティと母豚免疫をしっかりつけていくことが、PED発生を終息させ、生産性を高めていくことにつながると確信しています。1日も早いPED終息を願っております。



株式会社エコアニマルヘルスジャパン

代表取締役

石垣 克至