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十月のご挨拶

仲秋の候、皆様いよいよご清祥のこととお慶び申し上げます。平素は格別のご高配を賜り、厚く御礼申し上げます。

 前回に引き続き、第 7 回国際新興・再興豚病学会「ISERPD 2015 (The 7th International Symposium on Emerging and Re-emerging Pig Diseases)」のお話です。PRRSと口蹄疫についてご報告します。

1)中国農科大学ハンチャン・ヤン先生「高病原性PRRSウイルス:最新研究の進捗」(HIGHLY PATHOGENIC PRRSV: RECENT RESEARCH PROGRESS)

 豚繁殖・呼吸障害症候群(PRRS)は、中国においても、依然深刻な被害を養豚業界に影響を与えています。それは病原性の高い新規変異株、「高病原性PRRSウイルス(HP-PRRSV)」株の出現のためです。通常の野外株と較べて、豚体内での増殖量が桁違いであることから、急性経過の肺の損傷の原因となります。これまで中国では、HP-PRRSウイルス株から作出された幾つもの弱毒生ワクチンがあります。しかし、PRRSウイルス分離株のワクチン類似性と多様性より、中国での収まらない発生は、不適切なワクチン接種に関連していると考えられています。

 PRRSウイルスの標的となる細胞が免疫を司るマクロファージであり、感染してマクロファージが死滅するということが免疫不全につながります。動物衛生研究所の豚への実験感染モデルより、HP-PRRSウイルスでは単独でも症状を示し、高熱で沈鬱・蹲り、食欲廃絶するものの、どこかの臓器がやられる訳では無く、免疫系が破壊されるだけで回復するそうです。ですからPRRSウイルスの「高病原性」と「致死率」は同一でなく、その他の致死的な病原体も感染していた場合に免疫が働かず、結果その病原体が最大限の悪さをして、死亡率を上げることになるようです。
 PRDC豚呼吸器症候群の被害が更に大きくなるのであろう高病原性のPRRSが日本に侵入させないため、「バイオセキュリティ」で持ち込ませないことが肝要だと考えられます。



2)エジンバラ大学Tanja Opriessnig 先生「PCV2の最新情報:現行ワクチンの診断ツール、新規株と有効性」(WHAT IS NEW ON PCV2: DIAGNOSTIC TOOLS, NOVEL STRAINS AND EFFICACY OF CURRENT VACCINES)

 PCV2はPCV2a、PCV2b、PCV2cとPCV2dを含む4つの主要な遺伝子型に分けられます。PCV2d株はスイスの保存サンプル中で1998年まで遡ることができました。更にPCV2d-1及びPCV2d-2の二つのグループに細分されます。一般的に、PCV2dは米国、アジアで罹患率が増加しています。PCV2d株は従来の豚を使用した研究より、これまでのPCV2a株やPCV2b株に比べて、より病原性であることが判明しました。PCV2dはPRRSウイルスとの同時感染させたワクチン未接種豚の71.4%で死亡を誘導する強毒性であると判ったのです。
 心配されるPCV2aに基づく現行ワクチンの効果は、PCVADを著しく減少させ、
PCV2dウイルス血症から豚を保護することができたと聞いてホッとしています。



3)XPバイオ社ウォンヒョン・リー先生「韓国における口蹄疫の最新発生状況とコントロール戦略」(CURRENT STATUS OF OUTBREAKS AND CONTROL STRATEGY FOR FOOT AND MOUTH DISEASE IN KOREA)

 韓国の状況をまとめると、口蹄疫についての取り組みが日本と同じではないことがわかります。韓国は『口蹄疫はワクチンでコントロールできる』としている点です。日本ではワクチン使用は発生中心の周りを「リング・ワクチネーション」することで更に拡大させない目的であり、「最後の手段」です。そのワクチン投与動物も淘汰対象とすべきである理由が今回の韓国の発生拡大からもわかります。ワクチンでは完全に口蹄疫ウイルス感染を防御できず、また感染動物でも無症状の動物をしっかり選別できないからです。

①2014年12月3日以降、2015年4月までに185件(牛5件、豚180件)の発生が確認(O型)。発生農場でも発症しない動物が3週後に移動していたと聞きました。(現在は補助金付きの淘汰)
②牛・豚・山羊・鹿に対して3価混合ワクチン(Asia1型・A型・O型)を接種するも、抗体陽性率は低く、これがワクチンをしっかり投与しない農場の問題かワクチンの抗体上昇が悪いのか、明らかにしていません。(抗体の上がらないワクチンで、当初は陰性だと即罰金だったが、今はワクチン接種証明書が無いと罰金になり、その金額は当初の約50万円が100万円になったそうです。)
③どうもフェリー転覆事故ではないが、国・農林省・地方自治体の連携が悪いようです。畜産関係者の車両は皆GPS登録が義務付けられているのに、未登録車両を使用して、動物の移動があったようです。(発生報告しない農場があるので、発生報告の奨励金まで用意されたとも聞きました.)
④2014年12月17日、韓国政府は危機段階を、「注意」から「警戒」に格上げ。発生状況等を踏まえ、2015年5月に「警戒」から「注意」に、さらに同年7月には、「注意」から「関心」に引下げました。(4危機段階:関心→注意→警戒→深刻、発生対応に意識の差をつけることが理解できません.)



 今回取り上げたものをまとめると...
①PRRS高病原性株が中国から侵入しないようバイオセキュリティのレベルを上げよう!
②PCV2のワクチンが有効であることを監視すべく、ウイルス変異に気を付けよう!
③諸外国の口蹄疫の流行状況を十分注意しよう!

 新しい病気が日本に侵入することは、ヒト・ものの移動から「日常茶飯事、いつでも起こり得ること」と意識して、個別の一農場のバイオセキュリティを上げて行きましょう。それが地域防疫のレベルを上げ、引いては国家防疫につながるものだと考えます。
 「清浄国」であり続けることは、「清浄な、健康で美味しい肉」のブランドとなり得るものと信じています。

 朝晩はめっきり寒くなりました。長引いた夏の疲れと、寒い季節の変化で動物も体調を崩しやすくなりがちです。体調管理をしっかりお願い致します!

株式会社エコアニマルヘルスジャパン

代表取締役 石垣 克至